・焼香讃(しょうこうさん)
願我身浄如香炉 願我心如智慧火
念念焚焼戒定香 供養十方三世佛
がんがしんじょうにょこうろ
がんがしんにょちえか
ねんねんぼんじょうかいじょうこう
くようじっぽうさんぜぶ
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書き下し
願わくは我が身浄きこと香炉の如く、願わくは我が心智慧の火の如く、念念に戒定の香を焚焼し、十方三世の佛に供養し奉る。 |
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解説
「香偈」とも呼ばれ、法要の最初に唱えられることが多い偈文です。
香を焚いて身と心とその道場を清め、十方三世の仏を供養します。十方とは東・南・西・北・東南・西南・西北・東北に上・下を加えたものですべての空間を表します。
三世とは現在・過去・未来を意味します。 |
・三宝礼(さんぼうらい)
一心敬礼十方法界常住佛
一心敬礼十方法界常住法
一心敬礼十方法界常住僧
いっしんきょうらいじっぽうほうかいじょうじゅうぶ
いっしんきょうらいじっぽうほうかいじょうじゅうほう
いっしんきょうらいじっぽうほうかいじょうじゅうそう
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書き下し
一心に敬って十方法界常住の佛を礼し奉る
一心に敬って十方法界常住の法を礼し奉る
一心に敬って十方法界常住の僧を礼し奉る |
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解説
三宝とは仏(ほとけ)、法(教え)、僧(教団または僧侶)を指します。
仏教徒として信仰すべき基本である三宝を心から敬って礼拝します。 |
・四奉請(しぶじょう)
奉請十方如来入道場散華楽
奉請釈迦如来入道場散華楽
奉請弥陀如来入道場散華楽
奉請観音勢至諸大菩薩入道場散華楽
ほうぜいしほうじょらいじゅとうちょうさんからく
ほうぜいせきゃじょらいじゅとうちょうさんからく
ほうぜいびだじょらいじゅとうちょうさんからく
ほうぜいかんにんせいししょたいほさじゅとうちょうさんからく
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書き下し
十方如来を請じ奉る、道場に入り給え。(散華楽)
釈迦如来を請じ奉る、道場に入り給え。(散華楽)
弥陀如来を請じ奉る、道場に入り給え。(散華楽)
観音勢至諸の大菩薩を請じ奉る、道場に入り給え。(散華楽) |
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解説
十方の如来(仏)・釈迦如来・阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩・その他諸々の菩薩の御来場を請い願います。
「散華」とは、華(花)を撒いて仏を供養することです。
「施餓鬼法要」などでは「散華楽」と唱えながら華皿を用いて実際に参加を行います。
なお、「日用勤行式」では、「四奉請」のみ漢音で唱えます。 |
・ 懺悔偈 (さんげげ)
我昔所造諸悪業 皆由無始貪瞋痴
従身語意之所生 一切我今皆懺悔
がしゃくしょぞうしょあくごう
かいゆむしとんじんち
じゅうしんごいししょしょう
いっさいがこんかいさんげ
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書き下し
我が昔造る所の諸の悪業は、皆無始の貪瞋痴に由てなり。
身語意の生ずる所に従って、一切我れ今皆懺悔す。 |
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解説
入場いただいた諸仏・諸菩薩を前に自らが今日まで知らず知らずのうちに犯してきた様々な罪業(悪い行い)を悔い改め、懺悔します。
そうして身心が共に清浄になった上で回向に臨むのです。 |
・十念
南無阿弥陀佛 を10回唱えます
なむあみだぶ を10かいとなえます
*礼讃・和讃などの後の「十念」は南無を9回、南無阿弥陀仏を1回唱える場合があります。これは時宗独特の唱え方で「一気十念」と言います。 |
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解説
「十念」とは念仏を10回唱えることですが、必ずしも10という数字が重要ではありません。
時宗では「一気十念」といい、一息で唱える所を十念であるとします。それは一息一息の絶えるところを臨終、吸う息は生、吐く息は死、と捉えるところに由来します。
それゆえ、7回でも11回でも「十念」なのです。
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・開経偈(かいきょうげ)
無上甚深微妙法 百千萬劫難遭遇
我今見聞得受持 願解如来真実義
むじょうじんじんみみょうほう
ひゃくせんまんごうなんそうぐう
がこんけんもんとくじゅじ
がんげにょらいしんじつぎ
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書き下し
無上甚深微妙の法は百千萬劫にも遭い遇うこと難し。
我れ今見聞して受持する事を得たり。
願わくは如来の真実義を解せん。 |
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解説
「誦経」(声に出して経典を読誦すること)に先立って唱える偈文です。
触れることすら難しい仏の素晴らしい教えを理解することを願います。 |
・四誓偈(しせいげ)
我建超世願 必至無上道 斯願不満足 誓不成正覚 ……
がごんちょうせがん ひっしむじょうどう
しがんふまんぞく せいふじょうしょうがく……
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書き下し
我れ超世の願を建つ。
必ず無成道に至らん。
斯の願満足せずんば
誓って正覚を成ぜじ。
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解説
『無量寿経』の中の一節です。
「四誓」とは、法蔵菩薩が四十八の誓願を述べた後、続けて立てた4つの誓願です。 |
・三念仏(さんねんぶつ)
南無阿弥陀佛 を3回唱えます
なむあみだぶ を3かいとなえます
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解説
時宗では必ず「誦経」と「回向」の間で「三念仏」が唱えられます。
三回目の「なむあみだぶ」の「ぶ」は発音しません。 |
・弥陀回向(みだえこう)
弥陀本誓願 極楽之要門
定散等回向 速証無生身
みだほんぜいがん ごくらくしようもん
じょうさんとうえこう そくしょうむしょうしん
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書き下し
弥陀本誓の願は極楽の要門なり。
定散等しく回向して速かに無生の身を証せん。 |
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解説
善導大師の『観無量寿経疏』に記される「十四行偈」の中の一節です。
阿弥陀仏に対する回向であり、「誦経」の功徳を阿弥陀仏に回し向けます。 |
・仏身観(ぶっしんがん)
佛告阿難。及韋提希。此想成已。 ……
ぶつごうあなん ぎゅういだいけ しそうじょうい……
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書き下し
佛阿難及び韋提希に告げたまわく。
此の想成じ已りなば…… |
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解説
『観無量寿経』の中の一節です。
阿弥陀如来の身相、光明の観察が説かれています。
真身観文とも呼ばれます。
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・上人回向(しょうにんえこう)
宗祖証誠大師六十万人知識一遍智真大上人
遊行二祖他阿弥陀佛真教大和尚
遊行藤澤両御歴代上人 上酬慈恩
しゅうそしょうじょうだいしろくじゅうまんにんちしきいっぺんちしんだいしょうにん
ゆぎょうにそたあみだぶつしんきょうだいかしょう
ゆぎょうとうたくりょうごれきだいしょうにん じょうしゅうじおん
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解説
宗祖一遍上人と二祖真教上人、並びに歴代の遊行上人、藤澤上人の功績に感謝すると同時に、ご恩に報いることを志します。
歴代他阿上人への回向は次に「自信教人信の文」が続き、その他の僧侶の場合は『往生論』(世親著)の「讃佛諸功徳の文」が続きます。
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・自信偈(じしんげ)
自信教人信 難中転更難
大悲伝普化 眞成報佛恩
じしんきょうにんしん なんちゅうてんきょうなん
だいひでんぶけ しんじょうほうぶつとん
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書き下し
自ら信じ人をして信ぜしむることは難中の難にして更に転難し。
大悲を伝えて普く化すれば真に佛恩を報ずることを成ず。 |
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解説
善導大師の『往生礼讃偈』中の「初夜礼讃」に記される一節です。
お念仏の教えを自ら信じ、そして他の人々へ教えを広める。それは非常に難しいことではあるけれども、阿弥陀仏の大悲のみ心を伝え広めることこそが仏様のご恩に報いることです。 |
・十四行偈(じゅうしこうげ)
道俗時衆等 各発無上心 生死甚難厭 佛法復難欣……
どうぞくじしゅうとう かくほつむじょうしん
しょうじじんなんえん ぶっぽうぶなんごん……
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書き下し
道俗の時衆等、各無上心を発せ。
生死甚だ厭い難く、佛法復た欣い難し。
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解説
善導大師の『観無量寿経疏』に記される一節です。
厳密な意味では経典ではありませんが、他の誦経と同様に経典として拝読します。 |
・別回向(べつえこう)
願以上来所修善品皆悉回向之精霊者
先祖代々追善増上菩提
其佛本願力 聞名欲往生
皆悉到彼国 自致不退転
がんにじょうらいしょしゅぜんぽんかいしつえこうのしょうれいは
せんぞだいだいついぜんぞうじょうぼだい
ごぶつほんがんりき もんみょうよくおうじょう
かいしつとうひこく じちふたいてん
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書き下し
其佛の本願の力、名を聞きて往生せんと欲せば皆悉く彼国に到りて、自から不退転に致る。
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解説
在家への回向は『無量寿経』に記される「其佛本願力の文」を唱えます。
追善回向とは、仏や菩薩に供養したり、僧侶に施したり、あるいは念仏を唱えることなどで積んだ善行の功徳を遺族が亡き者のために回し向けることです。 |
・発願文(ほつがんもん)
我が弟子とう。願わくは今身より。未来際をつくすまで。身命を惜しまず。本願に帰入し。……
わがでしとう ねがわくはこんじんより みらいさいをつくすまで。しんみょうをおしまず。ほんがんにきにゅうし。……
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解説
宗祖発願文とも言います。一遍上人が大和(現・奈良県)の当麻寺にて書かれた願文で、『一遍聖絵』巻第八に記されます。
読経ではこの「発願文」より伏せ鉦を用います。 |
・摂益文(しょうやくもん)
光明遍照 十方世界 念佛衆生 摂取不捨
こうみょうへんじょう じっぽうせかい
ねんぶつしゅじょう せっしゅふしゃ
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書き下し
光明は遍く十方の世界の念佛の衆生を照らし、摂取して捨てたまわず。 |
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解説
『観無量寿経』の中の「仏身観」に記されている一文です。
念仏する人に、救われない人は一人としていないという念仏の功徳をたたえます。 |
・念佛一会(ねんぶついちえ)
南無阿弥陀佛を繰り返し唱えます
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解説
唱える念仏の数を定めずに、専ら念仏を唱えます。
この「念佛一会」は、念仏を唱える口称念仏の行であり、時宗の安心の根本(一番大切な行)であるので、厳かな気持ちで唱えなければなりません。 |
・総回向(そうえこう)
願以此功徳 平等施一切
同発菩提心 往生安楽国
がんにしくどく びょうどうせいっさい
どうほつぼだいしん おうじょうあんらくこく
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書き下し
願わくは此の功徳を以て平等に一切に施して同じく菩提心を発して安楽国に往生せん。 |
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解説
善導大師の『観無量寿経疏』に記される「十四行偈」の一節です。
これまでの誦経や念仏による功徳を全ての生きとし生けるものに回し向けて、極楽往生を願います。 |
・四弘誓願(しぐせいがん)
衆生無辺誓願度 煩悩無辺誓願断
法門無尽誓願知 無上菩提誓願証
自他法界同利益 共生極楽成佛道
しゅじょうむへんせいがんど ぼんのうむへんせいがんだん
ほうもんむじんせいがんち むじょうぼだいせいがんしょう
じたほうかいどうりやく ぐしょうごくらくじょうぶつどう
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書き下し
衆生無辺なれども誓って願くは度せん。
煩悩無辺なれども誓って願くは断ぜん。
法門無尽なれども誓って願くは知らん。
無上菩提誓って願わくは証らん。
自他法界同じく利益して共に極楽に生じて佛道を成ぜん。 |
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解説
仏道修行に励むうえでの四つの誓いを立て、さらに念仏や誦経の功徳を分け合って、すべての人々が仏道修行を成就することができるようにと願います。
他宗でも広く読まれる願文ですが、最後の二句は浄土門特有の一節です。
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・三礼拝(さんらいはい)
礼拝を一回行うごとに、3回南無阿弥陀仏と唱えます |
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解説
三唱礼とも言います。
地域等によりこの三礼を行わない場合もあります。
3回の礼拝を行い、1回の礼拝ごとに3回念仏を唱えます。 |
・送仏偈(そうぶつげ)
請佛随縁還本国 普散香華心送佛
願佛慈悲遙護念 同生相勧尽須来
しょうぶつずいえんげんぽんごく ふさんこうげしんそうぶつ
がんぶつじひようごねん どうしょうそうかんじんしゅらい
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書き下し
請たてまつりし佛、縁に随って本国に還りたまえ。普く香華を散じて心より佛を送り奉る。願くは佛慈悲を以て遙かに護念したまえ。同じく生じて相勧尽し須来す。 |
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解説
善導大師の『法事讃』上巻に記される偈文です。
法要の初め「四奉請」でお迎えした諸仏・諸菩薩を感謝の気持ちと今後の常の護念を願って、みんなで浄土へいらっしゃい、という言葉を称え法要を終了します。 |